毎日家族の食事を作るキッチンは、私にとっては、もう一つの大切な創作の場でもあります。
私のパンチニードル・ラグフッキングに欠かせない手染めのウール(糸)の多くは、このキッチンのお鍋から生まれるからです。
家族の健康を考えながら料理を作る時間と、自分の理想の色を求めてウールを染める時間。
一見、別々のことに思えますが、私の中ではどこか似ているんです。
ほんの少しの塩加減で、料理の味がピタリと決まる瞬間。
ほんの少しの染料の加減で、糸の色がパッと理想に近づく瞬間。
その「加減」ひとつで、思った通りにも、また思いがけない変化にも転んでいく。
その繊細なプロセスが、たまらなく楽しいんですよね。
ただ、ここは家族が口にするものを作る、一番安心でなくてはならない場所。
だから、染めをするときは家族が出かけていない時間を狙って、一気に集中して進めます。
「料理の道具」と「染めの道具」は、どんなに忙しくても絶対に混ぜない。
染めをするときは、キッチンには料理に使うものは一切出さない。
衛生的にも健康的にも、そこは自分の中で大切にしている「切り替え」のラインです。
準備も片付けも正直大変ですが、そのメリハリがあるからこそ、どちらの時間も清々しく、心を込めて向き合える。
お鍋から生まれる美しい色と、おいしい食事。
どちらも私と家族の毎日を、内側から支えてくれる大切なエネルギー源です。

